24節気(にじゅうしせっき)と72候(しちじゅうにこう)について、詳細な一覧やその背景、暦の歴史における付加事項などを網羅して解説いたします。
1. 24節気(12の節気と12の中気)と各名称・簡単な意味
24節気は、地球から見た太陽の通り道である「黄道」を360度とし、春分点(黄経0度)を起点に15度ずつ24等分したものです。これにより1年を春夏秋冬に分け、さらにそれぞれを6つの期間に細分化しています。
24節気は、太陽黄経が30度の倍数(0, 30, 60…)になる**「中気(ちゅうき)」と、その中間である15度, 45, 75…になる「節気(せっき、正節とも)」**の2種類が交互にやってくる構造(12の節気と12の中気)となっています。旧暦(太陰太陽暦)において「中気」は月名を決める基準となり、「節気」は占いなどの年・月の区切り(節切り)に用いられます。
各節気の名称と黄経、簡単な意味は以下の通りです。
【春】
- 立春(りっしゅん)[節気・黄経315度]:春の始まり。寒さがあっても春の気配が立ち始める時期。
- 雨水(うすい)[中気・黄経330度]:降る雪が雨に変わり、雪解け水が流れ始める時期。
- 啓蟄(けいちつ)[節気・黄経345度]:冬ごもりをしていた虫などが土の中から這い出てくる時期。
- 春分(しゅんぶん)[中気・黄経0度]:太陽が真東から昇り真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになる時期。
- 清明(せいめい)[節気・黄経15度]:万物が清らかで生き生きとし、草木が芽吹く時期。
- 穀雨(こくう)[中気・黄経30度]:春の雨が降り、百穀を潤して芽出させる時期。
【夏】
- 立夏(りっか)[節気・黄経45度]:夏の始まり。新緑が眩しくなる時期。
- 小満(しょうまん)[中気・黄経60度]:草木が茂り、麦などが穂をつけ始めて少し安心(小満)する時期。
- 芒種(ぼうしゅ)[節気・黄経75度]:稲や麦など、芒(のぎ:穂の先の毛)を持つ穀物の種をまく時期。
- 夏至(げし)[中気・黄経90度]:北半球で昼の時間が最も長くなる日。本格的な夏に向かう時期。
- 小暑(しょうしょ)[節気・黄経105度]:暑さが日に日に増し、本格的な暑さに入る少し前の時期。
- 大暑(たいしょ)[中気・黄経120度]:1年のうちで最も暑さが厳しい時期。
【秋】
- 立秋(りっしゅう)[節気・黄経135度]:秋の始まり。暦の上では秋となり、秋の気配が立ち始める時期。
- 処暑(しょしょ)[中気・黄経150度]:厳しい暑さが峠を越え、落ち着き始める時期。
- 白露(はくろ)[節気・黄経165度]:草の葉に白い露が結ぶようになる、秋の気配が深まる時期。
- 秋分(しゅうぶん)[中気・黄経180度]:春分と同様に昼夜の長さがほぼ同じになる時期。
- 寒露(かんろ)[節気・黄経195度]:晩秋に冷たい露が草木に降りる時期。
- 霜降(そうこう)[中気・黄経210度]:秋が深まり、霜が降り始める時期。
【冬】
- 立冬(りっとう)[節気・黄経225度]:冬の始まり。日差しが弱まり冬の気配が立ち始める時期。
- 小雪(しょうせつ)[中気・黄経240度]:わずかに雪が降り始める時期。
- 大雪(たいせつ)[節気・黄経255度]:本格的に雪が降り積もる時期。
- 冬至(とうじ)[中気・黄経270度]:本格的な冬に至り、北半球で昼の時間が最も短くなる日。
- 小寒(しょうかん)[節気・黄経285度]:寒さが厳しくなる時期。いわゆる「寒の入り」。
- 大寒(だいかん)[中気・黄経300度]:1年のうちで最も寒さが厳しい時期。
2. 72候の各名称とその意味
七十二候は、24節気の1つの気(約15日間)をさらに約5日ずつ「初候(しょこう)」「次候(じこう)」「末候(まっこう)」の3つに細分化したものです。それぞれの名称は、気象の動きや動植物の変化を知らせる短い文になっています。 日本では明治時代に改訂された『略本暦』に掲載されたものがベースとして現在も親しまれています。以下にその全一覧と意味を示します。
【春の七十二候】
- 立春
- 初候:東風解凍(はるかぜこおりをとく)| 東風が厚い氷を解かし始める
- 次候:黄鶯睍睆(うぐいすなく)| 鶯が山里で鳴き始める
- 末候:魚上氷(うおこおりをいずる)| 割れた氷の間から魚が飛び出る
- 雨水
- 初候:土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)| 雨が降って土が湿り気を含む
- 次候:霞始靆(かすみはじめてたなびく)| 霞がたなびき始める
- 末候:草木萌動(そうもくめばえいずる)| 草木が芽吹き始める
- 啓蟄
- 初候:蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)| 冬籠りの虫が出て来る
- 次候:桃始笑(ももはじめてさく)| 桃の花が咲き始める
- 末候:菜虫化蝶(なむしちょうとなる)| 青虫が羽化して紋白蝶になる
- 春分
- 初候:雀始巣(すずめはじめてすくう)| 雀が巣を構え始める
- 次候:桜始開(さくらはじめてひらく)| 桜の花が咲き始める
- 末候:雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)| 遠くで雷の音がし始める
- 清明
- 初候:玄鳥至(つばめきたる)| 燕が南からやって来る
- 次候:鴻雁北(こうがんきたへかえる)| 雁が北へ渡って行く
- 末候:虹始見(にじはじめてあらわる)| 雨の後に虹が出始める
- 穀雨
- 初候:葭始生(あしはじめてしょうず)| 葦が芽を吹き始める
- 次候:霜止出苗(しもやんでなえいづる)| 霜が終り稲の苗が生長する
- 末候:牡丹華(ぼたんはなさく)| 牡丹の花が咲く
【夏の七十二候】
- 立夏
- 初候:蛙始鳴(かわずはじめてなく)| 蛙が鳴き始める
- 次候:蚯蚓出(みみずいづる)| 蚯蚓(みみず)が地上に這出る
- 末候:竹笋生(たけのこしょうず)| 筍が生えて来る
- 小満
- 初候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)| 蚕が桑を盛んに食べ始める
- 次候:紅花栄(べにばなさかう)| 紅花が盛んに咲く
- 末候:麦秋至(むぎのときいたる)| 麦が熟し麦秋となる
- 芒種
- 初候:螳螂生(かまきりしょうず)| 螳螂(かまきり)が生まれ出る
- 次候:腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)| 腐った草が蒸れ蛍になる
- 末候:梅子黄(うめのみきばむ)| 梅の実が黄ばんで熟す
- 夏至
- 初候:乃東枯(なつかれくさかるる)| 夏枯草が枯れる
- 次候:菖蒲華(あやめはなさく)| あやめの花が咲く
- 末候:半夏生(はんげしょうず)| 烏柄杓(からすびしゃく)が生える
- 小暑
- 初候:温風至(あつかぜいたる)| 暖い風が吹いて来る
- 次候:蓮始開(はすはじめてひらく)| 蓮の花が開き始める
- 末候:鷹乃学習(たかすなわちわざをなす)| 鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える
- 大暑
- 初候:桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)| 桐の花が(来年の)蕾をつける
- 次候:土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)| 土が湿って蒸暑くなる
- 末候:大雨時行(たいうときどきにふる)| 時として大雨が降る
【秋の七十二候】
- 立秋
- 初候:涼風至(すづかぜいたる)| 涼しい風が立ち始める
- 次候:寒蝉鳴(ひぐらしなく)| 蜩(ひぐらし)が鳴き始める
- 末候:蒙霧升降(ふかききりまとう)| 深い霧が立ち込める
- 処暑
- 初候:綿柎開(わたのはなしべひらく)| 綿を包む萼(がく)が開く
- 次候:天地始粛(てんちはじめてさむし)| ようやく暑さが鎮まる
- 末候:禾乃登(こくものすなわちみのる)| 稲が実る
- 白露
- 初候:草露白(くさのつゆしろし)| 草に降りた露が白く光る
- 次候:鶺鴒鳴(せきれいなく)| 鶺鴒(せきれい)が鳴き始める
- 末候:玄鳥去(つばめさる)| 燕が南へ帰って行く
- 秋分
- 初候:雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)| 雷が鳴り響かなくなる
- 次候:蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)| 虫が土中に掘った穴をふさぐ
- 末候:水始涸(みずはじめてかる)| 田畑の水を干し始める
- 寒露
- 初候:鴻雁来(こうがんきたる)| 雁が飛来し始める
- 次候:菊花開(きくのはなひらく)| 菊の花が咲く
- 末候:蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)| 蟋蟀(こおろぎ)が戸の辺りで鳴く
- 霜降
- 初候:霜始降(しもはじめてふる)| 霜が降り始める
- 次候:霎時施(こさめときどきふる)| 小雨がしとしと降る
- 末候:楓蔦黄(もみじつたきばむ)| もみじや蔦が黄葉する
【冬の七十二候】
- 立冬
- 初候:山茶始開(つばきはじめてひらく)| 山茶花(さざんか)が咲き始める
- 次候:地始凍(ちはじめてこおる)| 大地が凍り始める
- 末候:金盞香(きんせんかさく)| 水仙の花が咲く
- 小雪
- 初候:虹蔵不見(にじかくれてみえず)| 虹を見かけなくなる
- 次候:朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)| 北風が木の葉を払い除ける
- 末候:橘始黄(たちばなはじめてきばむ)| 橘の実が黄色くなり始める
- 大雪
- 初候:閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)| 天地の気が塞がって冬となる
- 次候:熊蟄穴(くまあなにこもる)| 熊が冬眠のために穴に隠れる
- 末候:鱖魚群(さけのうおむらがる)| 鮭が群がり川を上る
- 冬至
- 初候:乃東生(なつかれくさしょうず)| 夏枯草が芽を出す
- 次候:麋角解(おおしかのつのおつる)| 大鹿が角を落とす
- 末候:雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)| 雪の下で麦が芽を出す
- 小寒
- 初候:芹乃栄(せりすなわちさかう)| 芹がよく生育する
- 次候:水泉動(しみずあたたかをふくむ)| 地中で凍った泉が動き始める
- 末候:雉始雊(きじはじめてなく)| 雄の雉が鳴き始める
- 大寒
- 初候:款冬華(ふきのはなさく)| 蕗の薹(ふきのとう)が蕾を出す
- 次候:水沢腹堅(さわみずこおりつめる)| 沢に氷が厚く張りつめる
- 末候:鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)| 鶏が卵を産み始める
3. それ以外の付加すべき事項
24節気および72候には、その歴史的変遷や暦の計算方法の進化に関わる非常に興味深い背景があります。
「気候」という言葉の語源 私たちが日常的に使っている「気候」という言葉は、実はこの「二十四節『気』」と「七十二『候』」を組み合わせたものが語源となっています。
中国からの伝来と日本の風土に合わせた改訂 七十二候は古代中国で作られましたが、伝来した当初の候には「雉入大水為蜃(キジが海に入って大ハマグリになる)」のような実際にはあり得ない非科学的な内容や、日本の気候・生息する動植物と合わない事柄が含まれていました。 そこで江戸時代に、暦学者の渋川春海らが日本の気候や風土に合わせて何度か改訂を行いました。その後も「宝暦暦」などで修正が加えられ、非科学的な内容は概ねなくなりましたが、不思議なことに「腐草為蛍(腐った草が蒸れ蛍になる)」などは最後まで残されました。明治時代に発行された『略本暦』に掲載された改訂版が、現在私たちが目にする七十二候のベースとなっています。
カレンダー(暦)への記載と「半夏生」 江戸時代において、七十二候は詳しい注釈がつく専門的なカレンダーである「具注暦」にのみ記載され、庶民向けの「仮名暦」には記載されないことが一般的でした。しかし、夏至の末候にあたる**「半夏生(はんげしょう)」**だけは例外的に農作業の重要な目安として仮名暦にも記載されることが多く、現在でも「雑節」の一つとして日本のカレンダーに残り、親しまれています。
七十二候の定め方(平気法から定気法へ) 江戸時代の「寛政暦」以前は、1年の長さを単純に72等分して七十二候の日にちを定める「平気法」が使われていました。しかし、その後の「天保暦」において、地球の楕円軌道に基づく太陽の実際の運行を基準とする「定気法」が24節気に導入されると、七十二候に対して詳細な日にちまで割り振ることはやめられました。明治時代の略本暦でも同様の扱いとなっており、カレンダーや暦の専門的な仕組みが変遷する中で、七十二候の扱われ方も変化してきた歴史があります。
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